はちみつには生タイプと加熱してあるタイプがあるのをご存じでしょうか?
生はちみつは酵素が生きているので美容と健康に優れた効果を発揮しますが、残念ながら、スーパーなどで気軽に買えるはちみつのほとんどは加熱処理がしてあります。
ここでは、生と加熱してあるはちみつの違い、生はちみつを選ぶ時のポイントをご紹介します。
目次
生はちみつとは
ミツバチが花の蜜(花蜜)を採集し、巣に帰ってから吐き出し、貯蔵したものがはちみつです。
簡単に聞こえますが、ミツバチは命がけではちみつを作ります。
1匹のミツバチが一生で集められるはちみつの量は、ティースプーン1杯分と言われています。
ショ糖である花の蜜を、ミツバチは体内で自身が持つ酵素によってブドウ糖と果糖に分解します。その蜜は巣に持ち帰った時点では、水分量70%と大変水っぽい状態です。
それを巣にいる貯蔵係のハチに口移しで渡し、巣に保管します。
そして、貯蔵係のハチは、自らの羽で羽ばたいて水分を蒸発させます。
水分量20%になるまで濃縮されたら、巣作り係のハチが蜜ろうによって蓋をし、じっくりと時間をかけて熟成したら、はちみつがやっと出来上がります。
私たちが手にするはちみつは、養蜂家の方がこの巣板を遠心分離器にかけ、フィルターで濾して不純物を取り除き、瓶詰めしたものです。
これが正真正銘の生のはちみつです。
はちみつ本来が持つ栄養素が生きていて、栄養価が非常に高い食品です。
生はちみつとはちみつの違い
ミツバチの巣から採った蜜そのままが生はちみつです。
対して、生ではないはちみつというのは、何でしょうか?
自然界に咲いている花をミツバチが採って作るので、はちみつには色、風味、味、粘度などそれぞれ違いが生じます。
生のままだと同じはちみつとして販売しても色や粘度に統一性がなかったり、遠心分離機だけだとハチやハチの子が混ざってしまうので、加熱しサラッとさせてから、ろ過します。
市販されているほとんどのはちみつは加熱処理されていると考えていいでしょう。
そして残念なことに、はちみつは45度以上だと含まれている成分が壊れてしまうので、加熱処理してあるものは、本来はちみつが持つ栄養素は含まれていません。
生はちみつとはちみつの生産方法
生はちみつの生産方法
ミツバチはその時の満開の花の蜜を仲間と共に集め、巣に運びます。
その蜜は巣の中で、ハチの羽ばたきによって水分が抜けていきます。
そしてミツバチの分泌液である蜜蝋によって蓋がされ熟成します。
その蜜を遠心分離器にかけて巣から飛ばしたものが生のはちみつです。
自然の物ですので、ハチやハチの子が混ざってしまうため何回も、ろ過をします。
しかし、生のはちみつはドロッとしていて扱いが難しく、瓶詰めも大変な作業なので高価になります。
一般的なはちみつの生産方法
ミツバチが作るはちみつは巣の中で熟成させるためとても時間がかかります。
そこで、一般的に販売されているはちみつの多くは、コストや生産性を重視し早く製品にしたいからと、熟成を待たずに収穫をしてしまいます。
当然、まだ完成していないので水っぽい状態です。そこで濃度を上げるため水あめや人口転化糖を添加し、さらに加熱し水分を飛ばします。
はちみつを購入する際は瓶にあるラベルをよく見てください。
純粋はちみつは、ミツバチが作ったはちみつに何も加えてないもの。国産では水分含有量が23%以下、海外産では20%以下という基準があります。
加糖はちみつは、水あめや人工転化糖を加えたもの
精製はちみつは、精製飲料水や食品加工に使いやすくなるよう、はちみつから香りや色を取り除いたもの
加糖と精製はちみつは加熱が行われています。なかには、はちみつは香りづけ程度で、中身は砂糖がメインといった商品もあるので、はちみつの持っている期待すべき栄養はほとんどないと言っていいでしょう。
注意すべきは純粋はちみつです。
日本の「純粋はちみつ」の表示規定は、加糖はNGだが加熱はOKというもの。
加熱も人工的な加工ですので、生はちみつとは異なります。
この紛らわしい「純粋はちみつ」という表示には気を付けて下さい。
生はちみつの効果と効能
生はちみつは、一般的な加工されたはちみつよりも様々な栄養素がバランス良く含まれています。いわばスーパーフードです。
その栄養価の高さは、健康と美容に優れた効果を発揮します。
殺菌作用
ミツバチの巣の中で熟成された生はちみつは、80%という高い糖度を保っているため、細菌のバクテリアはその浸透圧で体液を吸い取られてしまい生きていられません。
また、はちみつに含まれるグルコン酸は殺菌力に優れ、グルコースオキシターゼという酵素が、過酸化水素を作ります。この過酸化水素は、消毒液のオキシドールの成分です。
古代エジプト人はその殺菌作用を知っていて、ミイラ造りの防腐剤としてはちみつを使用していました。
擦り傷にオキシドールで消毒すると、白い泡がブクブクと出て傷に染みて痛いという経験をしたことがありませんか?
同じ過酸化水素でもはちみつを傷口に塗布しても、不思議な事にそれほどしみません。
それは、はちみつの糖分による保水性が、老廃物を含んだリンパ液の排出を促すためです。殺菌作用で傷口を清潔に保つ上、膿やリンパ液を吸収し回復を早めるという素晴らしい効能があります。
その他、はちみつの殺菌作用による効能は
- 火傷や擦り傷
- 喉の炎症
- 湿疹
- 口内炎
など幅広く期待できます。
なかでも、喉がイガイガとする時は、はちみつを喉の患部に当たるようにゆっくりと飲むと、患部に湿布でも貼ったかのように効いているという実感が得られると思います。
また、「日本薬局方」という生薬、製剤、試験法などの基準を定めた医薬品の規格書に、はちみつは医薬品として指定されています。
説明書には
「滋養・病中病後・肉体疲労・栄養剤、甘味剤として、そのまま又は薄めて用いる。口唇の亀裂・あれには、そのまま患部に塗る。」
と効果効能にあります。
はちみつの保湿効果でぷるぷるの唇になるなんて、「良薬は口に苦し」ではなく「良薬は口に甘し」ですね。
腸内環境を整える
近年、注目されている「腸活」という言葉を聞いたことがありますか?
腸を整えて便秘を予防するのだなと何となくわかりますが、腸は健康な毎日を送る上でとても重要な役割が秘められていました。
腸には食べ物だけでなく、さまざまな病気の原因となる菌やウィルスなどが入ってきます。
いわば体内で最も密接に”外”と接する臓器です。
その腸は排泄物を作る機能だけではありません。
全身の免疫を司る体中の免疫細胞の7割が腸にあるのです。
この免疫細胞を活性化させることが、外部からの病原体と戦う免疫力の向上にもつながります。
腸とは関係がないと思われていたインフルエンザや肺炎に対する免疫力の高さも、腸の免疫細胞力と関係していることが最新の研究でわかってきました。
生はちみつはオリゴ糖・グルコン酸を豊富に含み、腸内の善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を増やす働きがあり、腸内フローラのバランスを整えます。
腸内フローラとは、腸内に生息する約3万種類、1000兆個に及ぶ細菌類のことです。
その細菌類がお花畑のように見えることから「フローラ=お花畑」という言葉が使われています。
腸内フローラを整えることで期待できるのは、便秘や下痢の改善だけでなく、
- 免疫力の向上
- 花粉症やアトピーなどのアレルギー改善
- 生活習慣病の予防・改善
などの効果が期待できます。
疲労回復効果
生はちみつの主成分はブドウ糖と果糖です。
これらは単糖類といい、体に入るとこれ以上分解されることがないので、素早く短時間で吸収することができます。
胃腸への負担がないため、病気などで体力が衰え、食欲がない病人にブドウ糖を点滴するのはこのためです。
普通の生活で1時間あたり平均15gから16gのブドウ糖を消費していると言われますが、激しい運動をした後は血糖値が極端に下がり、最悪の場合は死んでしまう事もあります。
体内に吸収されたブドウ糖は血管を通って肝臓に運ばれて、大部分はグリコーゲンとなって蓄えられますが、一部は筋肉の中でグリコーゲンになって利用されます。
肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンは激しい運動によって消費されます。
そして、極度に血糖値が低下した場合には肝臓のグリコーゲンが再度、ブドウ糖に分解されて血液中に戻り、血糖値の低下を防ぐという緊急処置が働きます。
血糖値の極端な低下を予防するため、激しい運動の前には前もってグリコーゲンを体内に蓄えておく必要があります。
その最も理想的なのが食品が生はちみつです。
胃腸へ負担をかけずに短時間で血糖値を上げるので、マラソンやトライアスロンなど激しい運動の前にたっぷり生はちみつをとっておけば、体力の消耗を防ぐ事ができます。
マラソン選手がレースの途中で水分を補給するとき、特製のはちみつドリンクを用意しているというのは有名です。体にとって理にかなった摂取方法ですね。
生はちみつの成分
はちみつの主成分は、果糖とブドウ糖です。
その他、ビタミンやミネラルが豊富に含まれており、抗酸化作用に優れたポリフェノールも含まれています。
ビタミン類は、ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・葉酸・ニコチン酸・パントテン酸・ビオチン・C・K・コリンなどが約10種類。
ミネラルは27種類、22種類のアミノ酸、80種類の天然酵素、10種類以上の有機酸など、なんと150種類以上の栄養成分が含まれています。
腸内環境を整えてくれるグルコン酸やオリゴ糖なども含まれているので、非常にバランスが良く、まさにスーパーフードです。
はちみつより酵素が多い!?
栄養満点の生はちみつですが、注意すべきは熱に弱いことです。
ほとんどの栄養成分が加熱によって失われてしまいます。
45度以上になると栄養成分の破壊が始まり、60度でほぼ死滅すると言われています。
加熱の加工がされているはちみつは、期待する栄養はなく単なる甘味として考えましょう。
特に天然の酵素は熱に弱く、温度管理が必要です。
生はちみつとはちみつの見分け方
生はちみつと加熱加工されたはちみつが成分的にも全く異なることがわかったところで、どう見分けたらいいのでしょうか?
生はちみつの見分け方のポイントは3つあります。
成分表示を確認する
市販されているはちみつの瓶にラベルが貼ってあると思います。成分表示を確認して、「加糖ブドウ糖液」や他の糖類が添付されていないか確認しましょう。
また、「純粋はちみつ」と表示にあっても加熱してあるものが多いので、注意が必要です。
色を確認する
生はちみつはろ過をする作業しか経ていないので花粉が含まれています。
また、はちみつの酵素が発酵し続けて細かい泡が出ているため、透明感がない場合が多いです。
もちろん採蜜した花の種類によっては、透明度の高いはちみつもあるので判断材料の一つとして考えてください。
そして、加工されたはちみつには、わざと透明度を低くするため色を加えたり、焦げ付かせたりしている商品も残念ながらあるようです。
お店ではあまり見かけませんが、白く結晶化しているはちみつは純粋はちみつです。
はちみつの中に含まれているブドウ糖が低温になることで、結晶化します。
加糖が添付されていると結晶化はしません。
しかし、アカシアはちみつや果糖を多く含んでいると、なかなか結晶化しないので透明度が高いままです。
繰り返しますが、純粋はちみつでも加熱してあるものが多いので白く結晶化しているというのも、生はちみつの決め手にはなりません。
値段を確認する
生はちみつはドロッとしていて扱いが難しく、時間と手間がかかっているため、加工されたはちみつより値段が高くなります。
スーパーなどで販売している安いはちみつは、生産性を高めるため加熱や加糖が行われたはちみつで、生はちみつではなく、単なる甘味を加えるものと思ってください。
養蜂が盛んなヨーロッパやニュージーランドで採れた生はちみつでも、輸送の際に高温にさらされている商品も多く存在します。
はちみつが天然で加工されておらず、輸送時に温度が一定になるようコントロールされた商品が生はちみつと言えます。そのようなはちみつが値段が高くなるのは当然ですね。
しかし、嬉しいことに生はちみつは賞味期限がありません。
強い抗菌作用を持つので、ばい菌が繁殖しないからです。
毎回清潔なスプーンを使い、しっかり蓋を閉め、冷暗所で保存をしていれば、基本的に腐ることがありません。
高級品ですが、賞味期限がないので長く楽しむことができます。
生はちみつの美味しい食べ方
せっかくの栄養成分を余すことなく摂れるよう熱を加えず食べるのが大切です。
パンにつける、ヨーグルトに加える、レモンと合わせてはちみつレモンにするなど、美味しい食べ方は色々ありますが、一番のおすすめは、スプーンでそのまま食べることです。
はちみつそのものの味を堪能できるでしょう、生はちみつの産地、種類によって様々な味の違いを楽しめます。
その際、生はちみつは金属に触れると変質してしまうので、スプーンは木製の物を選びましょう。
美味しいうえに健康と美容に素晴らしい効果をもたらす生はちみつ。
あなたもぜひ味わってください。
参考:medicalook
『ひとさじのはちみつ』作・前田京子 マガジンハウス発行